2017-09-18から1日間の記事一覧

ご①:ゴッホ

ゴッホのことをよく知っているわけではない。ゴッホの壮絶な人生や、そこから生まれた作品の幾つかを、本やテレビなどの又聞きで、断片的に覚えているくらいだった。 数か月前の或る晩の丑三つ時に、ぼくはゴッホの目と出逢ったような気がした。 そのときぼ…

げ①:現在

「世も末だよね」 喫茶店の隣に座る女たちが話していた。彼女たちがいったい何を見聞きして、そのような言葉を話したのかは終ぞ知れなかった。彼女たちは、ぼくが席に着いてテーブルの上のトレーや灰皿の位置を正しているあいだに、席を立って店を出て行って…

ぐ①:グループ

たとえば学校のクラスのなかで二つのグループをつくるのに適当なワードや共通項はなんだろう。男女で分けたのでは味気も色気もない。運動部と文化部とでは帰宅部がいじけてしまう。続柄では三つ以上できてしまうし、両親・単親とではむずがゆく、性体験の有…

ぎ①:擬人

点の三つある図像が人や獣の顔のように錯視されるのをシミュラクラ現象と呼ぶ。両眼と口、もしくは鼻の逆三角形をつくる三点というのが肝らしいけれども、漫画的デフォルメやキュビスムなどを通過した現代のぼくたちにとっては、おそらく三点も必要とならな…

が①:がらくた

酔って帰る夜道に時折りガラクタが落ちていて、酒でタガの外れた頭がそれを拾えと言う。そうして拾い集めたものが部屋に幾つかある。それらが散らかって転がっているのを眺めて、なぜこんなものをぼくは拾ってきたろうかと頭を抱える。頭を抱えるだけで別段…