つ①:束の間

 今回、はじめて言葉を調べてから書きはじめた。「つ」から、何気なく使っていた「束の間」が浮かんで、果て、そもそもこれはどういう意味だったかと分からなくなってしまったからだ。ネットで「束の間」を調べてみると、

goo辞書:《一束(ひとつか)、すなわち指四本の幅の意から》ごく短い時間。ちょっとの間。

Weblio辞書(三省堂大辞林):〔指四本で握るほどの長さの意〕わずかの時間。ほんのちょっとのあいだ。

となっていて、やはり「束」は昔の単位らしく、「出たな身体尺度」といった具合で、腰を据えて調べてみた。

 「束」は、

goo辞書:③古代の長さの単位。指4本分の幅を基本とする、矢の長さをいうときに、八束(やつか)・十束(とつか)などと用いる。

Weblio辞書(三省堂大辞林):①上代の長さの単位。四本の指で握った幅。

ということだ。他にも、稲の量の単位として、重さ一斤の稲を一把とし、十把を一束としたらしいが、それが指四本分かどうかは知らない。だから「束の間」は稲ではなく、親指を除いた握り拳の四本指の幅として考える。

 面白いのは、その幅という距離が時間として変換されることだろう。例えば「十センチの間」と見聞きすれば、これは明らかに距離としてしか認識されないだろう。

 「ほんのちょっと」の意味で用いられることから、一束はほんのちょっとの長さということだ。「束の間」の「間」は、物質的な空間としての、たとえば壁に出来ている一束ほどの隙間というのならば理解が容易い。元はそういう風に用いられていたのかもしれない。それがいつ頃からか時間の「間」に用いるという洒落心が働いたのだろうと思う。

 それでは、この一束というのは実際にどのくらいの長さなのだろう。勉強も兼ねて同じ幅、距離である里から学んでいこう。

 1里という距離はおおよそ、36町で、2160間ということがネットに書かれている。そうして調べると、1間は6尺らしい。つまり一里は12960尺。そうして1尺は10寸だから一里は129600寸で、、、もうわけがわからなくなってきた。人が半時(約一時間)歩いた距離を一里としていたこともあるらしく、もうだめだ。なにがなんだかわからなくなってきた。

 平均的な矢の長さは尺貫法ではおおよそ3尺とされ、これは12束=48伏に相当したらしい。一伏(ふせ)というのは指一本分の幅で、4伏を1束とした。もう勘弁してくれ。しかし、もう少しの辛抱だ。平均的な矢の長さは3尺で、1間は6尺なのだから、平均的な矢の長さは半間ということになって、いや遠回りになるだけだ。重要なのは、平均的な矢の長さが3尺で、12束ということだ。つまりは、1束というのは、3割る12をすればいいわけで、あれ、3割る12っていくらだったけ。急きょ電卓アプリを起動させる。0.25だ。4分の1だ。つまり一束というのは4分の1尺だ! つまり「束の間」は「4分の1尺の間」だ! ここの「間」が距離単位の「間(けん)」 でないことが救いだ。4分の1尺ということは、尺がおおよそ30センチメートルだから、一束は7.5センチメートルなのだ! そうして一伏せは1.875センチメートルなのだ! だから「束の間」は、7.5センチメートルだけ進むのに費やす時間ということで、ほんのわずかな時間のことを言うのだ。

 さらに、人の平均的な歩速は、時速4.5~5kmと言われているらしく、まあ時速5キロメートルとして、一束に要する時間というのは、5キロは5000メートルで、500000センチだから、「0.000015時間」? というのは何分だ?何秒だ?「0.0009分」で「0.054秒」。本当か? 計算に自信が、いや方式すら怪しくなってきた。とりあえず「束の間」というのはおおよそ「0.054秒」ということがわかったはずのだ。

 ちなみに、「瞬く間」の「瞬く」は「まばたき」であって、一回のまばたきの速さは平均で100~150ミリ秒と言われているらしい(wikipediaより)。つまりはおおよそ「0.1~0.15秒」ということになって、「瞬く間」よりも「束の間」の方が「僅か度」は高いのだ(ほんのちょっと度にしてしまうと、なにがほんのちょっとなのかややこしくなる)。さらに言うと、「1瞬く間」はおおよそ「2~3束の間」ということになる。

 

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 さて、なぜこんな面倒なことになってしまったのだろうか。それに、もっと読みやすいように書けもしただろうに。まあ、勉強にはなった。「束の間」の方が「瞬く間」よりも僅かで、少しの時間なのだ。見た目や語感では「瞬く間」の方が素早いイメージだったが、そうでもないのだなあ。途中の里やらの説明が余計にややこしくしたな。改めて、簡単にまとめておこう。

 

  束≒1/4尺≒7.5cm

 人の歩行平均速度を時速5kmとすると、

  束の間≒0.054秒

 

 まばたきの平均速度≒0.1~0.15秒

  瞬く間≒0.1秒

 

 よって、「束の間>瞬く間」となる。

 まあ、しかし、速度を測る基準が足と目とで違うのだから、なんの参考にもならないか。

「今回の答えの正確さ<間違ってる可能性」

 

      2017年7月23日(日)