り①:リュックサック

 小学校にもあがっていないくらいの小さな子どもたちが、リュックサックを背負ってとことこ歩いている姿をよく見かける。リュックサックは背負うものではあるけれど、あれらくらいに小さな子たちの背中で揺れているものは「背負う」というよりも「羽織る」と呼んだ方がいいくらいに軽やかに映る。そのことがいい。

 容量の少なそうな小さいリュックサックには果たして何が入っているのだろう。ぼくが幼い頃も同様にリュックを羽織っていたのだろうけれど、その中身がちっとも思いだせない。遠足などであれば弁当や水筒が入っているだろうけれども、街中で、親に手を握られて歩く子どもたちの背中には一体なにが入っているのだろう。ハンドタオル、ペットボトル飲料、ちょっとしたお菓子、そんなものだろうか。親にでもなれば知れるだろうけれど、遠目ではちっともわからない。

 ぼくがはじめて自分でリュックサックを買ったのは、大学一年の、富士登山の前だった。いまでも愛用している。最近いれているものは、銭湯セット(バスタオル、あかすり、シャンプー、石鹸、髭剃り、着替え)と、ノートPC、ノート、ボールペン、煙草、ライター、いつ混入したか知れないゴミ。これで容量一杯だ。通りを歩く、リュックを羽織った子どもたちみたいに、もう少し身軽になりたい。

 安い喫茶店の窓越しに座って「り①」を悩んでいると、子どもたちの姿を見かけ、思ったことを書いた。

 

   2017年8月13日(日)